お墓参りはなぜするのか
今回はもう一度基本に戻って、「お墓参りはなぜするのか」というお話をさせていただきます。
前回少しお話しましたが、お墓は死者と私たちを仲立ちする石なんです。
古事記でイザナギ、イザナミが千引石を挟んで会話しました。黄泉の国にいるイザナミとこの世にいるイザナギが最後の別れを交わしたその会話は、一日に人が千人死に、千五百人が生まれることになる、といった日本の将来の予言だったんですが、お墓は本来魂の会話をするところなんです。
魂の会話とは、人と人とが本当に信頼し、お互いにかけがいのない大切な存在であることを確認しあう会話のことです。
そして亡くなった肉親の魂と残された家族とが心の中で素直に会話するところがお墓です。
それが家族の絆の始まりだと私は信じています。
神話はお墓(千引石)をはさんで死者と生者が会話することの大切さを教えてくれているのです。
日本は昭和20年の終戦の後、家制度を廃止してからバラバラの核家族となり、家族の絆を見失いかけています。
こんな時代だからこそ、お墓で眠っているお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、ご先祖様との、かけがいのないつながりを思い出して欲しいのです。
このようにお墓には「家族のつながりを確認しあう場所」というとても大切な役割があります。
そして家族の絆には、亡くなった方も含めた絆の意味があるんです。
人には二度死があるといわれています。一度目はこの身が滅んだ時、二度目は家族の記憶から故人が消えた時なんです。
お墓参りを通じて故人との会話がなされれば、それは永遠の命が与えられることになるんです。