今回は「お墓はなぜ石でできているのか」というお話です。
皆さんは石以外でできているお墓を見たことはありますか。
おそらくないのではと思います。でも、お墓はなぜ石なんでしょうか。
考えてみれば不思議な感じがします。
まず身近にある不変的なものといえば、川に行けば丸石があり、山には壁となって石が堆積しています。
不変的で聖なるものとして、日本では古代から、地元で身近にある石を使用して死者を弔ったと考えられます。
たとえば神霊の依り代という「磐座」、縄文時代の「環状列石」、蘇我馬子の墓と言われる「石舞台古墳」、あるいは中世から流行する道祖伸や石仏など、無数の石造物があります。
日本の神話にもイザナギ、イザナミの黄泉国、千引石の話があり、出口をふさぐ石としての千引石が墓石の始まりです。
このように日本の古代の神話の中にも石の墓石が出てくるんですね。
日本人は神代の昔から「石」に霊が宿ると考えてきました。
霊が宿る依り代として、川原の丸い石を埋葬地に置いたりしたんです。
先ほどの千引石に込められた意味としても、出口をふさぐほか、あの世とこの世の境界の役割があるんです。そして生きているものと亡くなったものとが会話する仲立ちの役割をするのです。
墓石にお参りすることは、境界の意思を挟んで、亡くなった家族やご先祖様と共に過ごす、かけがえのない時間という意味になるんです。
このように日本人が古代からお墓を石で作るのには、石の霊的な力を信じる伝統があったんですね。
それは一朝一夕に失われるものではなく、2千年以上の伝統の重みなんです。 お墓に向き合う時に今のお話を思い出していただけると、また違った感慨がありますよ