前にもご説明しました中身の無いお墓、「空墓」(からばか)についてお話したいと思います。
最近はお墓の概念が急速に多様化しています。これは以前お話しましたよね。
もともと死者の供養塔であったお墓がいくつかの目的を持つようになりました。
目的とは主に5つあります。
まず、故人や故人の生き方を偲ぶ。次に自分の死後の住まい。次にこの世に生きた証し。次に家族の絆を残したい。そして人生の物語を刻む。
その目的や思いがその人やその家族を語り継ぐお墓になっています。
ところが最近は家の継承や先祖を祀ることの継承など、跡取りについての疑問を感じている人が多くなりました。宗教に関心があるわけでもなく、さりとて習俗習慣上、親の墓は作らなくては、と思う方が多いんです。
よく墓石の表に、夢とか寂とか希望という文字が彫ってあるのを見かけます。その文字の下に家名まで彫ってあり、故人の名前や戒名等は一切彫ってないものがあります。
このようなお墓は前にも言いましたが、祀ることによって故人が神や仏になる、という代物ではありません。故人は永遠に故人のままであり、生まれ変わりの再生思想も見受けられません。祖先崇拝の社会的な機能はないと思われます。
お墓の役割を果たさず、いわゆる親族の連帯感、家の秩序、宗教的な道徳観等に価値を置かない記念碑、と言うことが出来ます。
信仰心の薄い人が「自分たちだけの墓」として、納骨堂や遺骨の処分碑などをつくっても仕方がありません。
また、たくさん売るだけのために設計したお墓、商品開発的なデザインのためにデザインしたようなお墓、まさに記念碑やただの石碑というべきお墓がこれからもどんどん作られようとしています。
このような宗教心の無い「空墓」を作っても全く意味が無いといえます。ご先祖様を祀らない、何の意味も持たない単なるお骨の入れ場所であるお墓を「空墓」と言うのです。 せっかくお墓を作るのであれば、ご自分たちの家系が繁栄されるように「福墓」を作っていただきたいと思います。家の安定を呼ぶ幸福の墓が「福墓」なんです。